縦書き、横書きに対応できる文字は非常に珍しい
今回は、情報をビジュアル化して届けるためのツールである「文章」についてお話しします。
たとえば、いま読んでいる本は縦書き、仕事で文書を書くときは横書き。
わたしたち日本人は、縦書きと横書きを抵抗なく受け入れていますね。ケースバイケースで横書き、縦書きに対応し、そしてそれが当たり前になっているのではないでしょうか。
ところが、縦書きと横書きの両方が可能な言語は、現代ではとても珍しいものなのです。
世界の文書は、言語や表記する文字体系の組み合わせによって文字を書く方向が異なります。文字を書く方向には、大きく分けて縦書きと横書きがあります。ここまではいいのですが、じつは横書きにも、文字を左から右へ(「↑」の方向に) 順に並べる「左横書き」と、文字を右から左へ(「↓」の方向に)順に並べる「右横書き」があるのです。欧米では左から右の横書きが主ですが、主にアラビア文字、ヘブライ文字、シリア文字は、右横書きが主になっています。なお、古代には横書きの一種として、「牛耕式」と呼ばれる書字方向もありました。 これは、1行ごとに書字方向が変わるもので、1行目が左横書き(「↑」)、2行 目が右横書き(「↓」)というものです。
縦書きにも、文字の列を右から左へ(「↓」の方向に)順に並べる「右縦書き」 と、左から右へ(「↑」の方向に)順に並べる「左縦書き」があります。わたし たちにお馴染みの右縦書きは、文字で言えば漢字、ひらがな、カタカナ、ハングルです。そして、左縦書きをする文字は、モンゴル文字です。中国語および、その影響を受けた日本語などでは、本来は右縦書きが用いられてきました。でも、近代以降はいずれの国でも横書きとの併用が行われてきまし た。ただし現代では、事実上、縦書きと横書き両方を併用しているのは日本語だけです。そのような意味でも、日本語は珍しい言語と言えるでしょう。
このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の2作目
『仕事に役立つ、日本人のための情報の世界史』(かざひの文庫)
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