「paper」の語源になった、「紙ではない」パピルス紙
バビロニアやアッシリアで文字の記録に粘土板が使われていた頃から、エジプトではパピルスからつくったパピルス紙が長きにわたって使われるようになりました。パピルスは、いまでもナイル川の上流などで見られる、高さ1.5メートルほどの植物で、英語の「paper」の語源になっています。
薄くて軽く、表面も滑らかで、持ち運びや保存にも適していたので、石や粘土板と比べて格段に優れた文字媒体だったと言えます。パピルス紙は、エジプトだけでなく、地中海沿岸からメソポタミアの国々で使われたようです。
パピルス紙の製法は、以下の通りです。
・刈り取ったパピルス草の茎の外側の皮を剥いて、白い髄を柱状に取り出す。
・髄を薄く削いで、繊維が縦横になるように貼り並べる。
・水分と糊を加えて適度な圧力をかけて、乾燥後に表面を滑らかにする。
ところでパピルス紙は、紙とは言っても、正式な「紙」ではないと言われています。日本工業規格の定義では、紙は「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と規定されています。もっとわかりやすく言えば、植物の繊維をほぐし、水のなかでばらばらにしたものを薄く漉いて乾燥したものです。
パピルス紙は、漉いていないので、紙ではないということになります。
でも、長きにわたって文芸作品や法律文書、宗教書、公文書などに使われたことを考えると、その存在意義は大きかったのでしょう。人間の知恵を感じるところです。
このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の2作目
『仕事に役立つ、日本人のための情報の世界史』(かざひの文庫)
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