軍事目的でコンピュータの開発が進む
今回も、コンピュータの発展の歴史を紐解いてみたいと思います。
20世紀に入ると、コンピュータに新たな進化の要因が生まれます。それは、1939年にはじまった第二次世界大戦でした。ドイツ軍は「エニグマ」と呼ばれる暗号機を用いました。エニグマはアルファベットの組み合わせによって複雑な暗号をつくり出すもので、この暗号化された通信は、イギリスなどの連合国軍を苦しめたのです。
そこでイギリスはエニグマの解析を行い、アラン=チューリングという数学者がチューリング・ボムという機械を開発し、戦況を左右する結果をもたらしました。ただ、暗号に関する開発だったので、世間には公表されませんでした。
のちにつながる重要な発明が起きたのは、アメリカでした。大戦中、大砲の砲弾の弾道を計算するために、電子回路を持つコンピュータが開発されたのです。それは、ジョン=モークレーやジョン=ノイマンが携わった、コンピュータの元祖として知られる「エニアック」というものでした。真空管を用いた電子回路を持つことで、それまでにない計算速度を実現しました。60秒の弾道を計算するのに熟練者が20時間かかるところ、エニアックは30秒で計算したそうです。ちなみにこのエニアック、重さが30トンと非常に巨大なものでした。
コンピュータの小型化を可能とした新しい発明
こののち、現在のコンピュータの小型化につながる開発がされます。第二次世界大戦後の米ソの冷戦時代に求められたのは、ミサイルにも搭載できるほど小さなコンピュータでした。アメリカの物理学者ウィリアム=ショックレーは、それまで用いられていた真空管に替わるトランジスタを発明したのです。このトランジスタによって、よりスマートな電子回路をつくることができるようになりました。
さらに1964年には、IBMがトランジスタを集積回路(ICチップ)に切り替えたコンピュータを開発し、コンピュータの小型化が一気に進むきっかけになったのです。それがノートパソコンやタブレット、スマートフォンにつながっています。
技術力の開発の背景に、戦争や冷戦があったのは皮肉なものですが、優れた発明こそ、平和利用されてほしいものです。
このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の2作目『仕事に役立つ、日本人のための情報の世界史』(かざひの文庫)のリンクはこちら。