「情報」の記録に不可欠な、文字という発明品
情報とは何か? と聞かれれば、いろいろな定義があるでしょう。
わたしは、「情報」とは「伝達されるもの」であり、「記録された情報」を情報として認識したいと考えています。
それでは、「情報」が「情報」として記録されるために必要なものは、何でしょうか?
それは、情報を蓄積するための「文字」です。人類は進化のなかで「言葉」を発明しましたが、音声としての言語は基本的に対面によるコミュニケーションでのみ有効であり、それを蓄積し、遠方に伝えるためには、「文字」として表現できる必要があります。
ですから、文字こそ「人類最高の発明品」と言えるのではないでしょうか。
「表語文字」「表意文字」と、2つの「表音文字」を使いこなす日本人
わたしたちが普段何気なく使っている漢字やひらがな、カタカナ、数字、アルファベットですが、学術上はいくつかの種類に分類できます。それは、大きく分けると「表語文字」と「表意文字」「表音文字」です。
表語文字は、一つひとつの文字が、意味だけでなく、発音も同時にあらわしている文字体系のことです。表語文字の代表例が漢字と言われています。たとえば、「本」という1文字で、英語で言えば「book」を意味し、「ほん」「もと」といった発音もあらわし、言葉(語)になっています。
表意文字は、一つひとつの文字が意味をあらわしている文字体系です。その代表例は、「アラビア数字」です。0、1、2、3~といったものは、意味(数)をあらわす文字であり、文字の発音を示すものではありません。たとえば「1」は、 日本語では「いち」ですが、英語では「one」ですね。最近EメールやSNSで使われる絵文字や顔文字も、もしかすると表意文字なのかもしれません。意味は何となくわかりますが、読み方は人それぞれでしょうから。
そして表音文字は、「母音を中心とした音を区切る単位」である音節文字と、「その言語を使う人が『同じ音』と認識する」音素文字に分かれます。代表的な音節文字が日本語のひらがな・カタカナであり、代表的な音素文字がアルファベットです。
たとえば、ひらがなの「か、き、く、け、こ」、カタカナの「カ、キ、ク、ケ、コ」はそれぞれ1文字ですが、これをアルファベット(ローマ字)にすると、「ka、 ki、ku、ke、ko」という2文字となります。つまりアルファベットのような音素文字は、「ka、ki、ku…」と組み合わせて使われるのです。なお、いま現在使われている音節文字は事実上ひらがな、カタカナだけとなっています。
日本語は、表語文字である漢字と表音文字(音節文字)であるひらがな・カタカナを使いつつ、場合によっては音素文字であるアルファベットを入れても違和感がないという、とても素晴らしい言語なのではないでしょうか。
日本語が難しいとされる理由は、そういうところにあるのかもしれませんね。
このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の2作目
『仕事に役立つ、日本人のための情報の世界史』(かざひの文庫)
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