後漢の蔡倫が発明した紙の製法は、7世紀に日本へ
電子的にデータを保存できるようになるまで、情報の伝達や保存のために大きな役割を果たしたのが、「紙」です。現代も、ペーパーレス化は進んでいるとは言え、 紙はなくては困る存在ですね。
紙は、『「後漢書」蔡倫伝』によれば、西暦105年、後漢王朝の頃に蔡倫(さいりん)という人物が発明したとのことです。
それまでの中国では、文字を書く材料として、木簡や竹簡が主に用いられていました。ごくまれに、きめ細かい絹布(帛書)が使われることもありましたが、非常に高価なものでした。帛書は蚕の繭からつくられていて、これが最初に「紙」と呼ばれていたものです。紙という漢字の部首が「糸」なのは、そのためなのですね。
蔡倫の発明した紙は、使い古された麻や布、魚網などでした。これらの繊維を細かく砕き、水のなかで攪拌して、ドロドロにします。それを薄く漉いて、シート状に仕上げて、紙となります。
発明された紙は、当然ながら画期的な書写材料としてもてはやされ、周辺の地域に伝播します。製紙法はまず西暦593年に朝鮮へ伝わり、西暦610年には高句麗の僧だった曇徴によって日本にも伝えられます。
紙がもたらされた飛鳥時代には、日本でも紙がつくられるようになりました。
朝鮮半島を経てわが国に伝えられた製紙術は改良されて、日本独特の流し漉きの技法を編み出して、優れた和紙を生み出したのです。
和紙の普及は、日本文化の向上につながり、天平文化や平安文化の開花に大きく貢献したと言えます。
紙の製法がヨーロッパ全土に伝わったのは、発明から1500年後
このように、中国で発明された紙は比較的早い時期に朝鮮や日本にその製法が 伝わったのですが、ヨーロッパ全土に伝わったのは、発明から1500年ほど経った17世紀でした。 中国も、大切な紙の製法を簡単にはライバル国たちに渡したくなかったのかもしれませんね。
このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の2作目
『仕事に役立つ、日本人のための情報の世界史』(かざひの文庫)
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