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インターネットのルーツを知り、真実を見る目を養う

インターネット軍事目的」は誤り?

一般的にインターネットは、 「アメリカとソ連の冷戦により、軍事目的ではじまった」と言われることが多いのですが、中野明さんの著書『IT全史 情報技術の 150年を読む』(祥伝社)では、たしかにインターネットは、東西冷戦という時代背景のもとで誕生したが、ソ連による核兵器の脅威から構築されたわけではない、と述べられています。

非常に興味深いものであるため、概略を紹介します。

 

ソ連が1957年10月に人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、アメリカは戦々恐々となりました。それは、ソ連が大陸間弾道ミサイルの技術を身につけたことを意味するからです。これを受けてアメリカ政府は1958年、国防省内にアメリカを防護する研究をする機関であるARPA(アーパ  高等研究計画局) を設立しました。

その後、ユタ州で謎の爆発が起き、3つの大陸横断電話中継基地が破壊されて、軍事・テレビ・電話回線が不通となりました。わずか3つの電話中継基地が破壊 されて軍事回線が不通となったことは、アメリカにとって衝撃的なことでした。このような事情から、アメリカ国防省はRAND研究所というところに通信ネッ トワークの研究を依頼したのです。ここで研究されたのは、電信網を使った・コンピューターを使った・デジタル方式のネットワークでした。

 

送るデータは、「メッセージ・ブロック」と呼ばれるもので、いわば「パケット」 でした。パケットという言葉は、同じ時期に研究をしていたイギリスの物理学者 が呼んでいたもので、結果的にこのパケットという言葉が定着することになりました。このアイデアは実現しませんでしたが、現代のインターネットにつながるアイデアだったと言えるでしょう。

インターネットの大元となったARPAnet

1967年、パケット通信を使ったネットワークの研究がはじまり、アメリカの4つの大学や研究機関を接続し、科学者たちがコンピューター上のデータを共有することを目的としたARPAnet(アーパネット)の運用が開始されました。このARPAnetが、やがてインターネットとなっていくのです。

このように、インターネットの大元となったARPAnetがアメリカ国防省傘下のARPAによって開発されたため、軍事目的だったと解釈されているのではないかと思われます。

冷戦下のソ連の脅威も関わっていたことを完全に否定することはできませんが、詳しく見ていくと興味深い事実があるものですね。

ARPAnetの成功に着目した全米科学財団(NSF)は、各地のスーパーコンピューターをARPAnetの技術で結ぶNSFnetを構築しました。NSFnetは全米の大学や研究機関のネットワークを相互に接続して利用できるネットワークであり、ネットワークとネットワークを結んだネットワークと いう意味で、「インターネットワーキング」、略して「インターネット」と呼ばれるようになりました。

NSFnetは当初、研究や教育目的だけの使用に制限されていましたが、インターネットの利便性が知られるようになると、これを営利目的に使いたいという要望が強くなりました。そして、1990年代に入ると商用インターネットがはじまり、今日に至っています。

新しい技術=戦争目的、冷戦の影響、といわれることも多いのですが、これからの「答えのない」時代、「本当にそうなのか?」という、真実を見る目を養っていく必要があるのではないでしょうか。

 

このコラムの参考文献、弊社代表取締役 玉原輝基の処女作

『古代から現代までを読み解く 通信の日本史』(かざひの文庫)

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